この前id:hitode909くんからピープルウェアを貰ったので読んだ。非常に面白くて、興味深い話が多かった。

- 作者: トム・デマルコ,ティモシー・リスター,松原友夫,山浦恒央
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/12/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本は、作者のトム・デマルコさんとティモシー・リスターさんが10年に及んだ調査と、自身のソフトウェア開発の経験をもとに、ソフトウェア開発における人に関する問題をたくさんのコラムを通じて教えてくれる。冒頭には以下のようにある。
実際のところ、ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである。
いろんなレイヤにおける人の問題についてそれぞれ章がわかれていて、個人からオフィスやチーム、さらには会社組織のはなしへと続く。結構マネージャー視点ぽいコラムが多い気がする。
以下、いくつか記憶にのこった部分をピックアップしてみた。
うまくいっているチーム、うまくいっていないチーム
21章 "全体は部分の和より大なり" によると、チームが結束し同じ目標を向くことできると、大きな力を出すことができるようになるという。チームが結束しはじめると、一体感がでてきて、よく一緒にご飯をたべにいったり、チームにしかわからない冗談を言い合ったりするし、他のチームとは違う選ばれたものだ、という雰囲気を醸し出したりするそうな。
バグを見つける喜びのもとに結束したすばらしいテストチームの例がおもしろかった。ありとあらゆる入力をプログラムに与えてはバグを見つけてはチームで大喜びして、プログラマを泣かしていたらしい。陰険なイメージを強調するためにチームメンバーは、みな黒い服を着てくるようになったそうで、そこからブラックチームと呼ばれていたそうな。彼らは独自の個性により結束した、社会的にうまくいっていたチームだった。最終的には、これまでに見つけられることのできなかった幾つものバグを発見することができたらしい。
自分も、確かにリリース時にクラッカーを鳴らすチームや、折にふれてお寿司の出前をとって慰労会を行うチームを見たことがある。たしかに、それらのチームは結束した良いチームであったように思うので、この話にはなんとなく納得感があっておもしろい。
また、結束したチームを作る簡単な方法はないが、台無しにする方法というのはあるらしく、23章 "チーム殺し、7つの秘訣"という章に書かれている。例えば、製品の品質削減を命じられる(例えば、雑でいいので急げと言われる)と、メンバーは自分たちの仕事に誇りをもてなくなり、結束は失われ、別のチームへの脱出を考え始めるとある。
人がやめないようにするという話
いくつかの章に、人が退職した場合におこる問題について言及されていた。客観的な視点で書かれていて良い。
19章 "ここにいるのが楽しい" では概算でも退職によってかかるコストは人件費の20%にあたるとあって明らかに無駄だと述べてる。また見えないコストとして、退職率の高い企業ではメンバーが長期的な視点を持てなくなるし、雰囲気が悪化して負のスパイラルに陥ってしまうことがあると書かれている。
逆に、退職率の低い企業では、メンバーは長期的な視点ができるようになる。長期的な視点のもとでは、組織をなるべく根本的に良くしようという力がはたらき、共通の方向性のもとで強く結束しやすく、より良い組織になることがあるらしい。
また、35章 "組織の学習能力" では、組織の経験をもとに、組織全体に技術を浸透させたり、組織を再編成したりといった、組織自体の学習能力について述べている。ここでも、"組織の学習能力は、どの程度人を引き止めておけるかで決まる"と書かれている。
さらに、退職率には目を背けがちだが、きちんと分析することで良い組織を目指せるというようなことも書いてあって、なるほどと言う感じ。
電話、電話、また電話
トム・デマルコさんはとりあえず電話がきらいで、電話が最悪だというだけの章(11章 "電話、電話、また電話")がある。電話が存在しないパラレルワールドに、とつぜんにグラハム・ベルがあらわれて電話のプレゼンをするんだけど、そんないつでも作業を中断してくる道具はいらないといって追い返してしまう。電話はたしかに異常で、人間同士が面と向かって会話していた時でも、ベルがなると電話のほうが優先されたりする。
フロー状態のエンジニアの作業を簡単に中断してしまってよくないので、電話をデスクにおかないか、電話をとらなくても良いという制度にすると良いとあった。
自分は、これまで電話のあるオフィスで働いたことがなくて、平和。
まとめ
ソフトウェア開発における人の問題について、漠然と感じていたことが言語化されて整理された良い本だった。具体的な例ものっていて納得感はあるし、読み物としてもおもしろいので、おすすめです。

- 作者: トム・デマルコ,ティモシー・リスター,松原友夫,山浦恒央
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/12/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Peopleware ちょっと読んだところ、1987年に書かれた本にもかかわらず、紹介されてるできごとが現代であるところの2014年でも起こりまくっていて、おもしろい。
— hakobe (@hakobe) 2014, 4月 7
Peopleware 曰く "結束したチームは健康的である。気軽に言葉をかけあい、自信に満ちていて、温かい。"
— hakobe (@hakobe) 2014, 4月 27