ビジョナリー・カンパニーを読んだ

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

普通に有名な本で、モチベーション3.0という本を眺めていたらおすすめされていて機運が高まり読むことにした。

著者は、アメリカの様々な業種の企業のCEOにアンケートを取り、そこから浮かび上がってきた卓越した18の企業と、それらに対応する比較対象の企業を18選び、その18組の企業について業績や基本理念、歴史といった様々な視点での調査を行っている。6年もの長い調査の結果、浮かび上がってきたビジョナリーな企業に共通する性質について紹介したのがこの本だ。

この本の原著は1994年に発売されているので、時代背景の違いは多少感じるものの、取り上げられているトピックについては企業で働いている僕のような個人が現代も共感できるものが多かった。ビジョナリー・カンパニーとして取り上げられている企業には、テクノロジー系だとヒューレット・パッカード、ソニー、IBMなどがなどがあった。

ビジョナリー・カンパニーを作り上げるポイントが本書ではいくつか挙げられているけれども、最も大事とされていて、自分としても印象に残ったのは「基本理念を維持し、進歩を促す」という慣行についてだ。つまり、企業の目的や価値観からなる基本理念を土台にすることで企業を継続し、それと同時に絶えず変化して進歩していくことで生き残るということだ。これらをどちらも諦めずに行えているかどうかがビジョナリーであるかの鍵となっている書かれている。太極図が挿絵に書かれていてそういう感じ。

言うのは簡単だけど、実際にやっていくのは、めちゃくちゃ難しいよねとは思う。まず基本理念を浮かび上がらせるのが大変だし、それを従業員が常に意識し続けられるようにするのも大変だし、常に進歩するってのもいろいろあって簡単ではないし。本書でもめちゃくちゃ難しいのでありとあらゆる工夫をし続けてがんばって維持するんじゃ、と書かれている....。18の企業がどういった工夫をしてきたかについては何章もかけて紹介されている。

工夫のなかでおもしろかったのは後継者を育てることの重要性について述べられているところだ。本書のビジョナリー・カンパニーの定義では企業が長く続いている(50年近く)ことが要求されており、経営者が代替わりしようとも、世代を超えて組織自体が繁栄し続けている企業に注目している。人間はいつか死ぬので、一人のカリスマがいるだけでは、組織が繁栄し続けることはできない。そのことに気づいて、数十年先の会社がどうなっていくかについて考えて、十分な時間をかけて基本理念を完璧に理解している後継者を育てた企業が長く継続しているのだ。自分としてはそういう時間スケールで考えたことがなかったので興味深かった。

本書では、企業のいろんな性質について、うまくいっている企業と、そうでない企業の具体例による比較がかなりの分量ある。それを読んでいると、自分の働いている環境ではここはうまくいっているな、ここはもう少しだなと、都度思い返すことになって、ある意味真剣に読んでいくことができた。気持ち的な負荷はまぁまぁあるので、疲れているときには読みづらかった。

企業はこうあるべきという大正解は別にないと思うものの、自分の中でうまくいってる企業の一般的なイメージが膨らんだので、読んでみてよかった。